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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

ピアノ録り その2

最近やったピアノのレコーディング、ようやく2つ目です(^_^;)
ピアニスト 伊藤志宏さんのソロ・アルバム、録音は奥沢にあるパストラル・サウンドで4月中旬から下旬にかけて3日間行いました。

桶川の響の森ホールで録った小西優子さんのアルバムに続き、今回も調律は名取孝浩さんにお願いしています。
志宏さんとは4年前に青木カレンさんの「Take My Heart」(アルバム「Shining」に収録) というオリジナル曲を録った時からのお付き合い、バス・クラリネットとのデュオ audace のレコーディングも僕が全てのエンジニアリングを担当するなど、良いお付き合いが続いている素晴らしい音楽仲間です。 今回はなんと志宏さん初のソロ・アルバム、しかしながら曲は全て女性ヴォーカルのスタンダード曲という面白い内容です。

前回の小西さんのレコーディングの時に試した新しいマイキングがかなり良かったので、今回もそれを基にしつつ、少しアレンジを加えました。 下の写真3つがいろいろな角度からのマイキング、クリックすると拡大します。

5月

ピアノ録り その1

4月

モンマルトル、愛の夜。

Maag Audio EQ4

3月

Altiverb 7

The Greatest Love of All

2月

山中湖にて

名盤再び

謹賀新年

プレイバック 2011 - 3

プレイバック 2011 - 2

プレイバック 2011 - 1

3☆ Colors

オン・マイクには計4本のマイクを使っています。 両端にコンデンサー・マイク Lauten Audio Clarion、その間に Telefunken の真空管ステレオ・マイク AR-70 とリボン・マイク Crowley & Tripp Recordist を配置、Recordist は感度が低いのでピアノの蓋の中に突っ込み、それ以外の3本は蓋を全開にした辺りに立てています。 AR-70 は AR-51のカプセルを2つ上下に配置したステレオ仕様、上のカプセルを回すことにより MS と XY 両方式で録ることができます (今回は写真のように MS で収録)。
そしてアンビエンス・マイクには Lauten Audio の真空管マイク Oceanous をペアで天井近くから狙うように立てています。
つまりピアノに計7ch、オン・マイクにあらゆる種類のマイクを使うことによって、ミックス時にいろいろなサウンドが試せるというわけです。 実際には5ch 全て同じくらいの出し具合で素晴らしいサウンドになっていました。
下の写真はコントロール・ルーム内の様子、マイクプリはいつものように api 3124+、そして電源ケーブルは今年から使うようになった OYAIDE Black Mamba Σ と WAGNUS の特注ケーブル、ライン・ケーブルも Wagnus のものを使っています。

続いてピアノ以外の楽器のマイキングを。
女性ヴォーカルには Telefunken AR-51 を使いました (写真左下)。 真空管マイクならではの暖かさですが程よく現代風なチューニングになっていてバッチリでした。
続いて楽器陣、ピアノとヴォーカルのデュオは2曲だけで、それ以外の曲にはさらにゲスト奏者が1〜2名加わります。 今回はピアニストのアルバムなのでピアノをメインのスタジオにセットし、ゲスト奏者はピアノ・ブースに入ってもらいました。
ヴィオラとチェロにはそれぞれオン・マイクに RODE K2 と Crowley & Tripp Recordist を使い (写真右下)、写真には写ってませんが部屋の隅にアンビエンス・マイクとして AKG C414 を立てています。 このように真空管マイク(もしくはコンデンサー・マイク) とリボン・マイクの2つをセットで使うのが最近のマイ・ブーム、前述したようにリボン・マイクはより近付けて録るのですが、この方法だとミックスの時に EQ で悩まなくてもいろいろなサウンドが作れます。 さらにアンビエンス・マイクも使えば 奥行き感もミックス時にコントロールできます。 これはステレオが望ましいですが、マイクやチャンネル数の都合などでモノラルで録ってもそれなりに効果的です。

ゲスト楽器はヴィオラ、チェロ、ドラム、パーカッション、ベース、アルト・フルート、トロンボーン、そしてバス・クラリネットと曲ごとに微妙に違うカラー、しかし低音楽器が多いというのが特徴でしょうか。
基本的にはどの楽器もヴィオラ&チェロと同じような感じのマイキングですが、打楽器の場合はオーヴァー・ヘッドに RODE NT-4、オン・マイクは RODE K2 2本 (チャンネル数の関係でリボンは使わず)、アンビは同じく C414 のペア、というマイキングです。

どのようなレコーディングであってもなるべく事前に打ち合わせをし、マイクやケーブルなどのプランニングをしてから臨みますが、今回は特に気合いが入り、また結果も全て思い通りに良い感じに録れました。
志宏さんも、初のソロ・アルバムということで緊張していたようですが、万全の態勢で臨んだのでしょう。 レコーディングはだいたいにおいて予定よりも若干遅れ気味に進むことが多いのに、この3日間はほぼ予定通り、むしろ若干巻き気味に進み、全て順調に良いテイクが録れました。
参加した全員が同じ方向を向き、それぞれのベストを尽くしたからでしょう、いくつもの「足し算の奇跡」が目の前で起き、楽しい時間でした。

最後に全員ではないですがゲスト奏者とのショット、順番に名取さん、井上真那美さん、田中詩織さん、ウィリアムス浩子さん、小森耕造くん、nobieさん、北田学くん、名嘉真祈子さん、そして青木カレンさんです。

アルバムは夏の終わりにランブリング・レコーズから発売予定、その頃また詳しく紹介します。