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このページでは音楽制作エンジニア、葛巻善郎日々の出来事をつづります。

puff up 第３弾

僕がマスタリングをしている Vivid Sound さんの新譜の中から、puff up レーベルの傑作完全復刻第３弾の２タイトルを紹介します。 ５月末のリリースなのですが、案内が遅れてしまいました。

VIVID SOUND

洋楽・邦楽問わず、名盤を毎月リリースしています

http://www.vividsound.co.jp/

まずは今回の大注目アイテム、村田陽一「SOLID BRASS」(扉写真) です。
篠田昌已さんと活動を共にした JAGATARA を始め、米米クラブの BIG HORNS BEE のメンバーとしても活躍したトロンボーン奏者、村田陽一さん初のリーダー作、オリジナルは91リリース年です。 この SOLID BRASS、なんといってもブラス･バンドの常識を打ち破る管楽器とドラムだけのビッグ･バンド編成というのが最大の特徴です。 つまりトランペット、トロンボーン、サックスによるブラス･セクションの他はドラムだけ、ベース･レスなのです。 ERIC 宮城、原朋直、菅坡雅彦、本田雅人、竹野昌邦、山本拓夫、関島岳郎、佐藤潔、村上ポンタ秀一、青山純、仙波清彦、大友良英、鳥山雄司、管野よう子 (敬称略) といったそうそうたるメンバーが参加しています。 このデビュー盤から村田さんのコンポーザー、アレンジャー、そしてプロデューサーとしての才能が見事に開花、
puff up の他の作品とはだいぶ違う音楽性ではありますが、まさにオンリー･ワンな名盤です。

なんと村田さん、今回のリマスタリング作業に立ち会うということで、ここ Studio CMpunch に来てくれました。 といっても厳しく注文を出す、ということはまったくなく、僕が作ったサウンドにすぐに満足してくれ、終始ごきげんで穏やかな方でした。 村田さんのブログを見ると、実にいろいろなお仕事をされていて、そして音楽に対して本当に真摯に取り組んでいる、というのがよくわかります。 僕にとっても貴重な経験でした。

そしてもう１枚、これもまた魅力的、渡辺等と Hililipom「渡辺等と Hililipom」(写真下) です。 村田さん同様、日本のミュージック･シーンにおいて様々なジャンルでひっぱりだこである渡辺等さん、本来はベーシストなのですが、この作品では全ての弦楽器を一人で多重録音、Hililipom という架空の管弦楽団が作り出した音楽という設定で制作されています。 和音ではなく、単音を重ねていくことによって、一聴すると複雑に聴こえるストリングスの音色が糸を捩っていくように少しずつハーモニーを形成していくのがわかります。 やや前衛的な作風ではありますが、この作品も渡辺さんのアレンジャー、コンポーザー、プレイヤーとしての有り余る才能を感じます。

どちらの作品も、僕のリマスタリング、特に MS 処理によって奥行き感が増しています。 また、レーベルの特色として地下実験室的なカラーがありますが、録音当時の熱気と言いますか、コントロール･ルームではきっとこんな感じで聴こえていたのだろうな、というサウンド作りを目指しました。


ぜひ聴いてください！